クリニック継承・閉院マニュアル

クリニック継承・閉院マニュアル

日本の医療を支えて
こられた先生へ

長い間、本当にお疲れさまでした。
患者様とその家族に寄り添い、多くの方が救われたと思います。誠にありがとうございました。
また、先生が仕事に集中できるよう支え続けたご家族の方々に対しても厚く御礼を申し上げます。

クリニックを閉院する方法について次の通りまとめましたので、ご参考にしていただけたらと思います。

クリニック閉院する方法
2つございます。
それぞれの方法について
解説してまいりますのでご確認ください。

クリニックを継承する場合

医院継承とは、その名の通りクリニックを新しい先生にお譲りする事です。
まずは、継承いただく先生をお探しする事から始めましょう。

近年、M&Aや医院継承に力を入れている会社が多く見受けられるようになりました。
中には高額な紹介料を請求する会社や独占契約を結ぶ会社もございます。
サービス内容の説明を受ける際、なるべく2人以上で説明を聞く事をお勧めします。

医院継承には
3つのパターンがございます

親族への継承

親族へ継承する場合に注意する事は、継承されるお子様やお身内の方の意思を確認する事です。
クリニックの建替えや内装をリニューアルした後、いざ継承する時になって、継承のタイミングが合わない等の様々な理由で継承出来なくなるケースがあります。ご本人に確認するようにしましょう。

知り合いのドクターへの継承

患者様は医師についているケースが殆どです。また、継承後に売上が落ち、お知り合いの先生との関係に距離が開く事が無いように、継承前から勤務をしていただき、時間をかけて引継ぎする事をお勧めします。また、金銭取引がありますので、税理士や弁護士を入れて、金銭トラブルが起きない様に注意しましょう。

第三者への継承

医師同士であっても、他人です。
のれん代の価格設定、内装代、医療機器や備品を転売する場合等、知っておかなければいけない情報が沢山ございますので、顧問税理士や経験のある医療専門の継承会社に相談をしましょう。

個人クリニック、医療法人を
継承する場合の違い

個人クリニック

個人クリニックを継承する場合、簡単にお話しすると、一度クリニックが「リセット」されます。
現院長は閉院の手続きをして、新しく開院する新院長は開設届を提出します。また、賃貸借契約を始め各業者との取引は、新たに開設する先生と契約する必要がある為、法人の継承と比べて手間がかかります。
ここでの注意する点は、新旧の院長が一緒に勤務した実績が必要となる事です。関東信越厚生局の開設届を提出する際、遡及手続きに必要となる為です。詳しいやり方は、最寄りの保健所、関東信越厚生局に相談しましょう。

医療法人

医療法人を継承する場合、今ある法人が「まるごと継承」されます。
その為、新しく開設届の提出は必要ありません。また賃貸借契約を始め、各業者との契約は不要になります。(代表者が変わった事は、取引先に連絡を入れましょう)
ただし、継承手続きが簡素化される分、リスクがあります。
未納の税金、未払の代金、借入金、リースが全て引継ぎとなりますので、その事を踏まえて債権債務を整理した上で引継をされる事が望ましいです。
顧問税理士にご相談しましょう。

継承のメリット

継承のメリットとしては、賃貸物件の場合、原状回復のコストを抑えることが出来ます。
また、固定資産の売却や営業権の売却等の収入が入ります。
その他、スタッフの雇用維持や患者様(カルテの引継ぎ)を引き継ぐ事で、患者様にも安心していただけます。

後任の先生が引き継ぎを拒否する場合がありますので、スタッフの雇用継続が必須の場合は継承条件に加えましょう。

継承先の探し方

継承物件を探している先生を探す方法は、いくつかございます。
なるべく良い条件で継承して頂けるよう、チャンネルは多く持ちましょう。

相談先について
グランデュールの物件サイトに登録をする

具体的な情報を「非公開」にした募集も可能です。 掲載は無料となります。

M&A会社に依頼

多くの会社がございますが、紹介手数料のコストが高い為、料金やサービス内容を確認して手続きを進めてください。

薬品卸会社、卒業大学、医師会に相談

卸会社の場合、新規にご開業される先生からの相談案件が多い為、ケースによっては直に見つかる事もあります。また、大学や医師会の場合は、医師同士のつながりでご紹介して頂けるケースがあります。

クリニックを閉院する場合

閉院の流れ・必要な手続きリスト

詳しくは顧問税理士や行政書士、社労士にご相談下さい。
なお、相談先が分からない場合は、専門の士業の先生をご案内させていただきます。

カルテ保管について

クリニックを閉院する時は、カルテ(診療録)などの書類保管義務や各行政機関に対して閉院の手続きが必要になります。

各担当窓口に相談の上、漏れの無いよう手続きを行ってください。

カルテの保管期間は
医師法で5年間と定められております。

保険医療機関及び保険医療養担当規則
(厚生労働省令第15号)

(帳簿等の保存)

  • 第九条
  • 保険医療機関は、療養の給付の担当に関する帳簿及び書類その他の記録をその完結の日から三年間保存しなければならない。ただし、患者の診療録にあたっては、その完結の日から五年間とする。

損害賠償請求がある可能性を考えると20年間の保管が望ましいです。

保管方法

紙カルテの場合、湿気などの対策を十分注意をしたうえで、ご自宅などで5年以上保管する必要がございます。また、貸倉庫などの外部を利用される場合は、24時間365日セキュリティがあり、空調などの設備が整っている場所をご利用ください。
また、紙カルテをそのまま電子化して保存する場合は、原本として扱わないケースもありますので、厚生労働省「 医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第5版 」をご確認の上、保管するようにしてください。

産業廃棄物マニフェストの保管について

紙マニフェストの保管は各医院に任せられています。
保管期間は5年間になります。

長期間の保管が必要になりますので、電子カルテ同様に保管環境には十分気を付けるようにしてください

なお、電子マニフェストの場合は、保管は不要になります。
国で運用しているホームページにログインする為の、IDとパスワードだけ保管してください。

電子マニフェストについて詳しくは、ご依頼している企業様にご相談して下さい。

各種廃業手続き(医療編)

閉院する際は各行政機関への閉院の手続きが必要になります。
開業時に手続きをした書類を見ながら漏れのないように手続きしましょう。

左にスライドさせてご覧ください。

管轄保健所
診療所廃止届 診療所を廃止した時は、10日以内にその旨の届出をする必要があります。
診療所開設者死亡届 開設者がお亡くなりになられた時は、10日以内にその旨の届出をする必要があります。なお、死亡診断書と戸籍謄本、届出義務者であることを証明する書類などが必要になりますので、管轄の保健所に問い合わせの上、ご準備ください。
エックス線装置廃止届 廃止後10日以内に手続きをしてください。

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管轄関東信越厚生局
保険医療機関廃止の届出 診療所を廃止後速やかに提出してください。添付書類は、保健所に提出した診療所廃止届の写しと指定通知書の原本になります。
なお、施設基準に係る辞退届は不要です。

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各都道府県 福祉保健局
麻薬施用者業務廃止届

業務廃止後15日以内に提出する必要があります。その際、麻薬所有届の提出も必要になります。麻薬の在庫が無い場合は「なし」で構いませんが、他院への譲渡や廃棄する場合は、別途届出する用紙がございます。

  • 麻薬譲渡届(廃止後50日以内)
  • 麻薬廃棄届(現物と一緒に都道府県庁に持っていく)
生活保護法指定
医療機関廃止届
業務を廃止した場合は10日以内に提出をしてください。
身体障害者福祉法
第15条の規定に基づく
医師の指定の辞退届
廃止後速やかに提出をしましょう。
指定自立支援
医療機関廃止届
この届け出は、心療内科のクリニック開設時に提出しているケースが多い届出になります。開設時に出しているか確認し、提出していた場合は速やかに提出をしましょう。
難病医療費助成指定
医療機関辞退申出書
廃止後速やかに提出をしましょう。
指定医指定辞退申出書
(難病指定医または協力難病指定医)
辞退される場合は速やかに提出をしましょう。

各種廃業手続き(税務)

左にスライドさせてご覧ください。

所轄税務署
事業廃止届
(完全廃業の場合)
顧問税理士にご相談するようにしてください。

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県税都税事務所
事業廃止等申告書 顧問税理士にご相談するようにしてください。
納税義務者の死亡による場合は、死亡の日から30日以内、その他の理由による場合は、事業の廃止の日から10日以内に申告をお願いします。
会計書類の保管期間 帳簿や決算関係書類の保管は7年となります。
ただし、事業者の経営状況によって保管期間が変わってきますので、担当の税理士に相談するようにしてください。

医療法人の解散手続き

医療法人を解散するには理由(医療法第55条)が必要になります。
また、解散の理由によっては、「解散認可申請書」または「解散届」のどちらかの提出が必要になります。
手続きが非常に複雑になりますので、顧問税理士もしくは行政書士にご相談ください。

労務関連手続き

閉院に伴う労務手続きが非常に多く、顧問契約のある社会保険労務士に相談するのが宜しいかと思います。
今までクリニックに尽くしていただいたスタッフ様への失業保険支給が迅速に行えるようにお手続きを進めていただくようお願いいたします。

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医師国民健康保険組合 資格喪失届 速やかに加入されている医師健康保険組合へ喪失のお手付きをお願いします。
なお、手続きの際、従業院様からは必ず保険証を回収するようにしてください。
年金事務所 適用事業所全喪届
被保険者資格喪失届
いずれも5日以内に年金事務所へ
健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届 該当から5日以内に年金事務所へ
健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 該当から5日以内に年金事務所へ
労働基準監督署 労働保険確定保険料申告書 休止・廃止から50日以内に労働基準監督署へ
ハローワーク 雇用保険適用事業所廃止届
休止・廃止から10日以内にハローワークへ
雇用保険被保険者資格喪失届 離職票、廃止届と同時にご提出ください。
スタッフ 閉院の告知が早すぎるとスタッフに動揺が走りますが、スタッフの生活や患者様を他の医院へ紹介する事も考慮して、2~3ヵ月前が宜しいかと思います。
取引業者への告知 外部に漏れると思いますので、その事を留意した上でお伝えください。
患者への告知 スタッフへ閉院の説明完了後説明するようにしてください。
また、定期的に通院されている患者様には随時ご案内が宜しいかと思います。
  • 株式会社グランデュール

  • 〒103-0004 
    東京都中央区東日本橋3-11-11 
    東日本橋Y'sビル5階
  • TEL:0120-661-196